キャブレターのお掃除

Warning

「火気厳禁」:燃料系の作業、ガソリンや揮発・引火性の高い溶剤を使用するため火気厳禁です。

Attention

キャブレター内は細かい部品が多いので、無くさないように。
CBR等複数キャブ場合、キャブを分割するとスロットルバランスが狂います。
バランスが狂うと「バランス調整」が必要になるので、バキュームゲージが無い場合は分割しないで清掃しましょう。

用意する物:サービスマニュアル(無い場合はパーツリスト)・7mmスパナ1本・10mmスパナ2本・5mm、6mmヘキサゴンレンチ・8mmボックスレンチ・+ドライバー3種・−ドライバー・プライヤー・内径3mmの耐油チューブ・キャブクリーナー・パーツクリーナー(樹脂を浸食しない物)・シリコングリス・ナイロンブラシ・歯ブラシ・エアガンが無い場合はエアダスタースプレー*パーツクリーナーが手に入らない場合は、ガソリンで代用。

キャブレターの取り外し
 タンク・エアクリーナーボックスを取り外すとキャブレターが見えます。左右のエアガイドを外します。周辺をエアブローしてゴミ・埃を飛ばし、フロート室下部のドレンにチューブを繋ぎ、フロート室内のガソリンを抜きます。アクセルワイヤー・チョークワイヤー・燃料ホース・アイドルノブクリップ・スロットルセンサーのカプラ・スロットルセンサープレートを外します。*プレートからセンサーを外さないでください。ロングシャンクの+ドライバーを使用し、インシュレーターバンドのスクリューを緩めます。後は引っ張り抜くだけです。キャブレターを抜いた後、エンジン内部に異物が入らないようインテークにウェス等を詰めます。

 フロート室のガソリンは排出していますが、内部にはまだガソリンが残っているため適当な受け皿にキャブレターを置き作業します。

パイロットスクリューの開度の確認
 パイロットスクリューの開度を確認します。パイロットスクリューをゆっくり閉めていき、締め込む力加減が変わったところまでの開度を各キャブごとに書き留めておきます。(パイロットスクリュー部にはゴムのOリングが入っているので、強く締めるとOリングが潰れて締まっていきます。スクリューバルブのOリングが接触する所まで締めて下さい。きつく締め込む必要は有りません。)ノーマルの場合、4キャブとも2と1/4戻しです。

外回りの洗浄
 キャブレター本体にパーツクリーナー等を浸けて柔らかいブラシを使って洗います。この時、出来るだけキャブレター内にゴミが入らないよう注意してください。

分解
 取り外せる物を全て外します。外した物は各キャブレターごとにまとめておきます。
 *NC29の場合・ジェットニードルの取り外しは、ジェットニードルホルダーにスクリューを入れプライヤー等でスクリューを引っ張りジェットニードルホルダーを引き抜きます。必ずバキュームピストンを持って、ダイヤフラムに強い力を加えないよう注意してください。

内部の清掃
 MJ・SJ・ニードルジェットホルダー等をキャブクリーナーに漬け込み、変質したガソリンの固形物や異物を洗浄します。固形物や異物が取れない場合は新品に交換してください。ジェット類の「穴」にワイヤー等を使って貫通させることは厳禁です。真鍮製のジェット類は柔らかいため「穴」が広がってしまいます。
 キャブレター本体の穴という穴すべてにキャブクリーナーを入れ、しばらく放置します。外したパーツもキャブクリーナーにつけ込みます。Oリング・フロートバルブ等ゴム部品はキャブクリーナーに浸けないでください。キャブクリーナーによっては、ゴムが変質し軟化・膨張します。各パーツを浸け込む間に普段手が入らない部分や、エアクリーナー・エアクリーナーケース内部の洗浄を行いましょう。*エンジン内に水分や異物が入らないよう注意してください。

フロートの点検
 フロート内にガソリンが入っていないか・フロートピンに段付きがないか確認します。ガソリンが入っていたり、段付き摩耗している場合は油面が狂ってくるので新品に交換しましょう。

フロートバルブの点検
 フロートバルブの上面(ゴム部分)に段付きがないか・バルブダンパー(バルブ下部の細い凸部)が正常に動くか確認します。もし段付きが有ったりバルブダンパーが動かない場合は、フロート同様油面が狂ったりオーバーフローの原因になるので新品に交換してください。

ジェットニードルの点検
 段付き摩耗や取れない汚れが有る場合は新品に交換してください。ポリッシングはしないでください。ジェットニードルは0.01mm単位でセッティングが変わってきます。

サブエアクリーナーの清掃
 サブエアクリーナーボックスを開け、サブエアクリーナーを取り出します。ケース・ホースと取り出したサブエアクリーナーを洗油や専用のクリーナーを使い洗います。サブエアクリーナーはあまり耐久性が高い物では有りません。痛んでいるようなら交換してください。純正部品で300円ほどだと思います。純正部品で無くても湿式のエアクリーナースポンジをケースに合わせてカットした物でも代用出来ます。

ダイヤフラム・Oリング・パッキン等ゴム部品の点検
 ゴム部品が硬化していないか・破損・ヒビが無いか確認します。不具合が有る場合はこれも交換してください。

キャブクリーナーの洗い流し・貫通の確認
 パーツクリーナー等でキャブクリーナーを洗い流し、全体をエアブローして「ジェット類や空気の通路」の貫通を確認し各部を組み付けます。*ウェスの繊維など細かい物も完全に取り去って下さい。キャブは精密に出来ています。細かいゴミ・チリが挟まった状態では正常に機能しません。エアブローする際は、あまり目を近づけて見ないようにしてください。キャブレターの通路は複雑で、思わぬ所からクリーナーやエアが噴出する事が有ります。

組立
 サービスマニュアルが手元に有る場合はマニュアルを確認しながら組み立てて下さい。パーツの取り付け位置はパーツリストで確認する事も出来ます。
 
ジェットニードルホルダーはパチンと節度を感じるまで強く押し込んでください。ダイヤフラム・パッキン類は正確に位置を合わせて下さい。チャンバーカバー取り付け時にコンプレションスプリングが屈曲しないよう注意して下さい。キャブレターボディー・ジェット類はアルミ・真鍮製の為強い力を加えると簡単に破損します。適度なトルクで締めて下さい。
 全て組み付けたら、バキュームピストンが正常に動くかファンネル側より指を入れ押し上げて確認します。パイロットスクリューを書き留めて置いた戻し回転数分開きます。

キャブの装着
 インシュレーターに詰めたウェス等を出して、インシュレーター内にシリコングリスもしくはCRC等の潤滑油を薄く塗布しキャブレターを取り付けます。各ワイヤー類を取り付けます。メンテナンスタンクを使いガソリンをキャブに送ります。メンテナンスタンクが無い場合は、ガソリンタンクを仮置きし、燃料ホースを繋ぎます。負圧式の燃料コックを使用している車種はPRI、PRIが無い車種はONにしてセルモーターを回してください。キャブレターよりガソリンが漏れていないか確認してください。
 異常がなければエアクリーナーボックス・タンクを取り付けエンジンを始動。十分に暖機し、アイドリング調整を行い終了です。

 本来はバキュームゲージを使ってスロットルバランスを取るべきですが、プライベートでバキュームゲージを購入するのは費用/頻度の点でお勧め出来ません。ショップにバランス調整を依頼した方が良いでしょう。