LEDテールランプの作成

 最近の車種は二輪・四輪とも、テールランプにLEDを使用した物が増えています。旧型車に比べてECUやインジェクションなど電装品が多い最近の車種は、必然的にオルタネーターの負担が大きくなります。また、視覚効果でもメリハリのあるLEDの点灯はやはり魅力。私のCBR600FsはHIDを導入したことで、消費電力は下がっているのですが、さらなる小電力化をするためテールランプをLED化する事にしました。

Warning

はんだこてやホットボンド等、高温になる工具を使用します。火傷等十分に注意して作業する事。

Attention

LEDには極性があります。極性を間違うと不点灯・破損の恐れがあります。

用意する物
 LED(必要個数+α)・抵抗2種類/各2本・整流ダイオード(1A)4本・プリント基板(ユニバーサル基板でも可)・プリント基板作成に必要な液剤(現像液・エッチング液・フラックス)・T20ウェッジベース2個・配線・グロメット2個・基板取付用5mmボルト/ナットセット・ホットボンド・配線図
 今回使用したLEDは赤色Flux型で定格30mA・90度拡散の物です。Webで色々と見て回ると、テールレンズが赤の場合、白色LEDを使用されている方と赤色LEDを使用されている方がいらっしゃいました。試しに白色LEDと赤色LEDをレンズ越しに点灯させてみたところ、CBR600FSの場合自然な色合いになるのは赤色LEDでした。

テールランプの分解
 大抵の車種はテールランプのレンズはホットボンドで固着されています。このボンドは熱により柔らかくする事が出来ます。
 テールランプを暖めます。私はバスルームの給湯を最高温度にして5分程つけ込み・マイナスドライバーで少しずつ分離する作業を繰り返しました。過大な力を加えると破損してしまうので、ゆっくり焦らずに。分解する事が出来たら、分解時と同じようにお湯に浸けてレンズ・ベースからホットボンドを出来るだけ剥がし取ります。レンズ内面を中性洗剤で洗い、洗剤成分が残らないように良く濯ぎます。

基板サイズの確認
 内蔵する基板のサイズを決定します。
取り外したテールランプのベースの内面サイズを測ります。CBR600Fsの場合リフレクター面は58mm×135mmでした。基板はこのサイズで作成します。

点灯イメージの作成
 点灯イメージをAdobe Illustratorで書き出しました。今回使用するLEDはFLUXのドーム部5mmの物です。FLUX LEDは1辺7.6mmの正方形です。ベースの形状・基板取付ボルトの配置・レンズの形状・回路設計の結果、48個のLEDを使用する事にしました。(※この個数であれば、基板上に抵抗・整流ダイオードの取付も可能です。)配置は2灯をイメージして左右24個ずつ。上下左右間隔を9mmとしました。

回路設計
 LEDを点灯させるには、電圧と電流をLEDに合わせる必要があります。
 今回使用するLEDは2.2V。1列に配置出来る個数を算出します。車両の電圧はバッテリーは12Vですが、エンジン稼働時14.4Vの出力です。
電圧を14.4Vとした場合、14.4V÷2.2V=6.55
最高6個のLEDを直列接続が可能となります。但し、これは常時14.4Vの電圧が供給されると仮定した場合です。実際はアイドリング時などは14.4Vまで上がりませんので、バッテリー電圧の12Vを基準に計算します。
電圧を12Vとした場合、12V÷2.2V=5.45
最高5個のLEDを直列接続が可能。使用するLEDは片側24個なので、4個1列を6列の配置とします。
 次に、電流量の制御です。方法はCRD(定電流ダイオード)で制御・抵抗で制御・レギュレータICで制御の3種類。今回使用するLEDは定格30mAです。最大輝度で点灯させるには30mAを流す必要があります。一般的なCRDは最大15mAです。CRDを使用する場合、6列の配置なので180mA・CRDは片側12個が必要です。これではテールランプ内に全てを入れることは出来ません。費用も高額になります。配置の自由度と費用の面から今回は抵抗で制御する事にしました。

ストップ時の抵抗値の計算
 抵抗値の計算にはオームの法則を使います。まず、抵抗にかかる電圧を求めます。
1列に配置するLEDは4個 2.2V×4=8.8V
抵抗にかかる電圧は14.4V−8.8V=5.6V (※ここではエンジン稼働時の電圧を基準にします)
 次に電流量から抵抗値を算出します。抵抗値は抵抗=電圧(V)÷電流(A)で算出できます。この場合、電流の単位はAなのでmAをAに換算します。
   5.6V÷0.18A=31.11Ω
電力(W)はW=電流(A)×電圧(V)
   0.18A×5.6V=1.01W
1.01Wなので2Wでも対応出来ますが、余裕を持って3Wの物を使用します。
テールランプ時の抵抗値の計算
今回はテール・ストップを同じLEDで明るさを切り替えることにします。仮に10mAのCRDを繋ぎ点灯させてみるると明るすぎたため、今回は電流量を7mAとしました。
ストップ時と同様の計算から133.33Ωの抵抗値が必要です。ただし、回路上、テール用抵抗の後にストップ用の抵抗を配置するので
   
133.33Ω−31.11Ω=102.22Ω
電力(W)は
   0.042A×5.6V=0.235W
0.235Wなので1/4Wで大丈夫ですが、ストップ用と同様に余裕を持って1/2Wを使用します。
実際はこのような数値の抵抗は有りません。近似値の物を使用します。ストップ用は33Ω(3W)。テール用は110Ω(1/2W)を使用するつもりでしたが、在庫切れのため120Ωを使用しました。
逆算すると14.4V時、ストップ時169.7mA(1列28.28mA)/ テール時36.6mA(1列6.1mA)となります。整流ダイオードの電圧降下(0.6V)を加味するとストップ時151.52mA(1列25.25mA)/ テール時32.68mA(1列5.45mA)。仮にエンジン停止時の12Vで計算すると、ストップ時96.97mA(1列16.16mA)/ テール時20.92mA(1列3.49mA)となります。

基板のレイアウト
部品配置の自由度から、今回はユニバーサル基板を使わず、プリント基板を自作しました。
点灯イメージから、上部と左右外側に空きスペースが有ります。抵抗と整流ダイオードはこのスペースに配置する事にしました。

基板の作成
 基板は感光基板を使用し作成しました。プリント基板の作成方法はWebで調べました。部品取付面はシルバーで塗装しています。
 取付ボルトを通す穴を開けます。出来上がった基板をベースにあて、クランプで固定します。5mmのドリルでベース側から取付ボルト用の穴を開けます。

各パーツの取付
 抵抗と整流ダイオードをはんだ付けします。次にLEDを基板に配置しはんだ付けします。ダイオード類は極性が有ります。破損の原因になりますので、間違わないよう注意してください。はんだ付けの「頭」はヤスリをかけて突起を無くします。

 全てのパーツを取り付けたら一度点灯試験を行います。(画像は2枚とも左側ストップ・右側テール)まずはテール。全てのLEDが眩しく光れば成功です。もし、一部の列が光らない場合はその列のLEDの何れかが破損している・極性を間違えて取り付けていると思われます。全く光らない場合は、基板作成を失敗・回路設計のミスなどを疑わなくてはなりません。次にテールを発光させたまま、ストップ側の回線を繋ぎ点灯させます。テール状態よりも明るくなればOK。もし明るさが変化しなかったり、異常な発熱が有る場合は、整流ダイオードの極性間違いや破損などが考えられます。

 問題なく発光する事を確認したら、ストップ・テール・アースの各配線を基板にはんだ付けします。はんだ付けした箇所は、ホットボンドで固定します。
基板と逆側に1mmのジャンパーワイヤーをはんだ付けし、熱収縮チューブではんだ付け部分を絶縁します。

ウェッジベースの取付
 T20ウェッジベースそのままでは基盤に干渉してしまうので、ショート加工します。(左/加工後・右/加工前)

 ジャンパーワイヤーをウェッジベースへ位置を間違わないよう(内側から見て、上段左端にアース・上段左から3番目にテール・下段右端にストップ)注意しながら挿入。溝に合わせてジャンパーワイヤーを折り返します。テールとストップのジャンパーワイヤーの折り返し部分は短めにします。配線側はホットボンドで埋めます。


組立
 基板をベースに取り付けます。そのまま取り付けるとダイレクトに震動が伝わる・発光位置が奥に入るので、グロメットをダンパー兼スペーサーとして使用します。5mmのボルトを通し、ナットはロックナットを使用しました。
レンズの取付
 ベースの外周の溝にホットボンドを充填します。左下の角は水抜きになってますので、ここには充填しないよう注意してください。
 レンズを装着して組立終了。

車体へ実装
 シートカウル取付のボルト・クリップを全て外します。カウルをずらしテールランプをはめます。車両側ソケットにウェッジベースを接続ます。先に記述の通り、LEDには極性があります。ウェッジベース側から見て左側にアース線が来るように差し込みます。差し込んだら一度点灯させます。テール・ストップとも正常に点灯することを確認します。もしこの時、テール・ストップで明るさが変化しない場合は、ウェッジベースに差し込んだジャンパーワイヤーの折り返しを短くしてください。シートカウルを元通りに取付け、終了です。

点灯状態
 左/テール・右ストップです。実際に見るともっと明るく光ります。ストップは十二分に明るく問題無し。夜間だとテールはちょっと明るすぎるような気がします。

 自作品ですので、耐久性等は未知数です。ストップ用に使った3Wの抵抗は思ったより発熱するようでちょっと心配な所もありますが、ストップは長時間の点灯は無いので恐らく大丈夫だと思います。取付後約1000km(07年 5月20日)走ってますが、今のところ不具合は有りません。
 ノーマルのテールランプに比べ、重量はかさんでしまいますが、小電力化(ノーマル比テールランプ-89%・ストップ時-90%)とルックスは満足行く物が出来ました。